ダンスのこと

歩くこと。

大森弥子

2021年の8月から歩行の稽古をするようになりました。
稽古といっても、はたから見ると、ただゆっくり歩いているだけですが、これが今はとても面白くて、ヨガも筋トレも英語の勉強も太極拳も、全て長続きしなかったけれど、歩行は寝る前のストレッチみたいに、やらないと若干ムズムズする気持ちになります。

始めたきっかけは、クリエイションの中で、せつ子さんのFATHERの完コピに取り組んでいた際に、、、。
映像の中のせつ子さんが歩いていて、ただゆっくり歩いているように見えるのに、真似しても違くて、よくよく見ると、前足が着地した瞬間に足ではなく臍がぐわっと前に踏み込んでいて、その影響で膝が曲がり足首まで力が流れ臍が前足の心地よいところに定まり、臍が上向きに持ち上がるから後ろ足がつられていくように地面から離れていく。「一歩、歩くだけなのにこんなに工程があるの?」と驚くと同時に胸がキュンとしました。

結局、完コピをやめる選択をしましたが、FATHERを見て知りたいと思った技術に焦点を当てていく中で、まずは「歩く」という稽古がスタートしました。
歩行稽古を始めた当初は、「できた」「できなかった」「よかった」「よくなかった」という判断の仕方をしていましたが、最近になってようやくそこから解放された感覚があります。もちろん歩いていて、自分でも驚くような感覚を得ることもあるのですが、それはご褒美のようなもので、そこに行けたことがよかったことではなくて、意識や知覚や空間の中をプカプカしながら、体に教えたり、体から教わったりする状態に今自分がいるということがそれだけでもう面白いなと思っています。
そう思える入口に出会えた感覚は確かにあるけれど、歩行の海は私が今想像しているより遥かに遥かに深そうなので、ぼんやりふんわり続けていこうと思っています。ストイックにやるとすぐに反省してしまうので。

クリエイションのプロセスの一つに「歩行」があったので、少し書いてみました。
ではまた。

2022.3.26.
大森弥子

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