重力について思うこと。
堀内まゆみ
今回、私のクリエイションは「重力」について考えることからスタートしました。
重力に対して意識し始めたのは、空を飛びたいという願望からだったと思います。
小さい頃は、いつも空を飛べたら良いなと思っていました。風の強い時は傘を持って塀から飛び降りたり、木があったらのぼったり、建物の窓枠や家々の屋根を眺めては、あれに飛び移りながら移動できないものかよくシミュレーションしていました。
たぶん、地面より少しでも高いところにいたいと思っていたのだと思います。でも、あまり器用ではないので、池のふちの高くなったところに上がっては、そのまましょっちゅう池に落ちていたり、冬は除雪後積み上がった雪山にわざわざのぼって帰ろうとし、雪に埋まって遭難しかけたり、雪の中に家の鍵を何本も無くして、親に怒られたりしていました。「どんな鳥でも想像力より高く飛ぶことはできない」を、体を張って体現していた子どもだったなと思います。
中学生で進路を考える時も、中国の山奥で雲に乗れる仙人になろうかなとか、生身の人間が空を飛べる研究をする研究者になろうかなと考えていました。アニメ「ドラゴンボールZ」に影響されて、”気” を使えば人が空を飛ぶことができるんじゃないかと、もう中学生なのに、割と本気で考えていました。
ピラティスを学ぶなかで、人は生まれたときから、そして乳児→幼児と育っていく中、重力に抗う形で筋力を発達させていくのだということを知り、重力に抗おうと育つ姿が「成長」であり、反対に重力に抗えなくなることが「老い」なのか?と考えたりもしました。人の一生は、重力に抗することで自由を手に入れ、反対にそれに抗えなくなることで自由を失う??
重力に興味を持ったきっかけですが、私はいつも作品を作る上で、「全人類に対し、平等であり普遍的であるもの」を探し続けているのかなと思うことがあります。重力はその意味で、地球上にいるあらゆる人に対し作用しているもので、その重力そのものとどう付き合おうとするか、そのこと自体が、その人の踊りの個性になって行くのかもしれないなと思います。
ダンスの生まれる根源に、この重力に抗おう、もしくは重力と付き合ってみようという感覚が、もしかすると人の意識の中にあるのかもしれないなと考え、ここの部分を、今回のクリエイションでもっと膨らませていけたら良いなと考えるようになりました。ダンスの生まれる最初の地点という場に「重力との関係」を置く、という方法です。
私自身と重力の関係についてはこのような感じです。
2022.2.17.
堀内まゆみ